「あの人は、自分のことをどう思っているんだろう。」
恋人の返信が、いつもより遅い。
友人の態度が、なんとなく冷たい。
自分には見せない顔を、
別の人には見せている。
そんな小さなことで、
「あの言葉、どういう意味だったんだろう」
「何か悪いことしたかな」
「本当は、自分のことをどう思っているんだろう」
と、相手の気持ちを何度も考えてしまう。
そんな経験はありませんか。
考えても答えは出ない。
だから、もっと考える。
相手の言葉や態度から、
なんとか「本当の気持ち」を読み取ろうとする。
でも、
知ろうとすればするほど、苦しくなる。
実は100年以上前、
まったく同じことに苦しみ続けた男を
夏目漱石が描いています。
『行人』に登場する、一郎です。
なぜ、人の心を知ろうとすると苦しくなるのか。
一郎は、妻の心を知りたくて仕方がありませんでした。
自分を愛しているのか。
本当は弟を愛しているのではないか。
考える。
疑う。
確かめる。
それでも、答えは出ません。
そして一郎は、こんなことを言います。
「他の心は外から研究はできる。
けれどもその心になって見る事はできない。」
これは一郎だけの話ではありません。
恋人でも。
友人でも。
家族でも。
どれだけ近い相手でも、
私たちはその人の心そのものになることはできません。
だとしたら、
私たちはなぜ、これほどまでに
「分かり合うこと」を求めてしまうのでしょうか。
そして、
完全には分からない他人と、
どうやって一緒に生きていけばいいのでしょうか。
この問いを、3通のメールで考えます。
夏目漱石『行人』を出発点に、
-
1通目
人の心を確かめようとすると、なぜ苦しくなるのか。
-
2通目
他人とはなんなのか。
-
3通目
分かり合えない人間同士が、それでも一緒に生きるには。
についてお送りします。
人間関係の悩みが、
すべて消えるとは言いません。
他人が思い通りになるわけでもありません。
でも、
「あの人は、なぜ分かってくれないんだろう」
「本当は、どう思っているんだろう」
と消耗していた時間は、
他人を見る角度が一つ変わるだけで、
少し減らせるかもしれません。
私自身、
この考え方を知ってから、
「相手の本心」を必要以上に追いかけることが減りました。
そして以前より、
他人との距離の取り方が
少し分かるようになった気がします。
文学の知識は必要ありません。
夏目漱石を読んだことがなくても大丈夫です。
「人間関係って、なんでこんなに疲れるんだろう」
と思ったことがある人にとってきっと役に立つ内容です。